なぜmixiは無料でフォトブックを配るのか -- ビッグデータの観点から考える
「ビッグデータ」という単語に対して漠然とした認識しか持っていなかったので『ビッグデータビジネスの時代』という本を読みました.
ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
- 作者: 鈴木良介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2011/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本はビッグデータを扱う具体的方法(hadoopなど)ではなく,ビッグデータを使ってどうビジネスをするかに重点が置かれており,エンジニアの僕には「そこまで考えてなかったな」という内容がいくつかありました.
様々な事例が掲載されており,発想の幅がほんの少しだけ広がった気がするので,ビッグデータの関連から最近の事例について考えてみます.
mixiはなぜ無料でフォトブックを配っているのか?
mixiが運営する,毎月無料フォトブックを自宅に送ってくれる「ノハナ」というサービスをご存じの方は多いと思います.
このサービスビッグデータの観点からこのサービスを考えてみましょう.
個人情報を自然にアップロードしてもらう
プライベートなデータを,無料かつ高性能のオンラインアプリケーションを介して吸い上げる
という戦略を紹介しており,事例としてGmailやPicasaを上げています.
誰でも本名や住所,写真などの個人情報をWebへアップロードすることには抵抗感があると思います.自分の子供の写真ともなると細心の注意を払うはずです. しかし,無料でフォトブックを送ってくれるとなれば,その「抵抗感」は「お得感」にかき消され,ユーザーはどんどん写真をアップロードするようになります.
つまりmixiは写真を現像して自宅まで届けるというサービスを運営することによって,ユーザーに抵抗感を抱かせることなく,多く写真とユーザー情報を得ていると言えるわけです.
なぜ家族写真にフォーカスしているか
写真を現像して届けるサービスならば,特に被写体は限定しなくて良いはずです. ではなぜノハナは家族写真(特に子供の写真)にフォーカスしているのでしょうか?
様々な見方があるでしょうが,あえてビッグデータ的な観点から考えるとそれは,"同一人物の成長過程の写真を得られる"からだと考えられます.
Picasaのような,いわば汎用写真ストレージでは,同一人物の写真は集められません.Instagramも同様です. しかし家族写真にフォーカスしたノハナであれば,生まれてから大人になる過程の貴重なデータが集まります. また,兄弟というコンピュータには非常に識別が難しい人物のデータが大量に集まるとなれば,そのデータを欲しがるのは画像認識系の研究者だけではないはずです.
こう考えると,他の企業には集めづらいこれらのデータはmixi社の強力な武器になりえそうですね.
勝手な予想をしてみましたが
素人の個人的な予測であり本当にそのような意図があるのかは分かりませんし,個人情報の悪用だなどというつもりは全くありません.
ノハナは,ユーザー側は現像する手間やお金をかけること無くフォトブックが貰える,mixi社側は多くの写真データを得られる,最近ではプロのカメラマンを派遣できるようなので,カメラマンの雇用も作れると三方良しの素晴らしいサービスだと思います.
SNSとしてのmixiはあまり元気がないですが,mixi社としてみるとノハナやデプロイゲート,Find Jobなど面白いサービスをリリースしているので,今後のリリースにも注目していこうと思います.
最後に...
最初に上げた『ビッグデータビジネスの時代』でO2Oという単語が(Online to Offline)という意味だと知りました.今度はO2Oの観点からもこのサービスを考えてみるのも面白そうですね.